勤医協歯科

DENT topic

高齢者の口腔ケアの大切さ・歯磨きの大切さ

「口腔ケア」とは、狭い意味では口の中のお掃除のことですが、広い意味ではお口の病気を防ぎ、食べる・のみこむ・話すなどの機能の増進を支援することをいいます。普段自分で歯みがきをすることが出来る健康な人とは違い、介助や介護が必要な人ではこれらを周囲がサポートする必要があるのです。


様々な効果

口腔ケアの効果には以下のようなものがあります。

  1. 誤嚥性肺炎などの予防
  2. 虫歯や歯周病の予防
  3. 歯周病の改善
  4. 口臭の改善
  5. 口腔機能(食べる、飲み込む、話すなど)の改善
  6. 口の粘膜疾患の予防と改善   など・・

★肺炎予防にも効果的

まず1.の誤嚥性肺炎についてですが、2年間介助者による専門的な口腔ケアを行った人たちと行わなかった人たちでは、行わなかった人たちのほうが発熱や肺炎を起こした人が約2倍近く多かった、というデータがあります。肺炎は日本人の死因の第4位ですが、高齢者の直接的死亡原因では第 1 位なのです。口の中の細菌を口腔ケアによって少なくすれば、たとえ唾液を誤嚥してしまっても感染する危険性は低くなります。

★舌の掃除で口臭改善

2.と3.の虫歯や歯周病については、毎日の清掃が重要なのは言うまでもないでしょう。
4の口臭は、 歯周病や、虫歯のあるお口が臭うのは良く知られていますが、舌苔(ぜったい。舌の表面に付く白いネバネバした苔状のもの)の付着も実は大きな原因になります。舌苔は専用の舌ブラシ(写真)を使うときれいに落とすことが出来ます。

★口腔清掃で味覚改善

5の口腔機能についてですが、ここに一つのデータがあります。「日常生活における楽しみ」は何か、と福祉施設や病院に入所している高齢者にアンケートしたところ、その第一位は圧倒的に「食事」でした。(表1)

 
特別養護
老人ホーム
老人保健施設
老人病院
入院患者
療養型病院
入院患者
1位
食事
(44,8%)
食事
(44,8%)
食事
(40,0%)
食事
(55,1%)
2位
行事参加
(28,0%)
家族訪問
(40,0%)
家族訪問
(39,4%)
家族訪問
(55 , 1%)
3位
家族訪問
(25,3%)
行事参加
(35,2%)
テレビ
(28,3%)
テレビ
(30,3%)

福祉施設および老人病院等における住民利用者の意識実態調査分析結果
「日常生活における楽しみ」(複数回答)
加藤順吉郎、 愛知医報、1434,2〜14(1998)

そして、口腔清掃により味覚がどう変わったかというデータでは、口腔ケアを行ったグループのほうが大幅に「味覚が改善」した、ということなのです。 (図2)


図2 口腔清掃による味覚変化 森田ら 平成15年

確かにきれいな口で食べるほうが料理も美味しいに決まっていますよね。また、飲み込んだり話したりといった機能も口の中や周りの筋肉が鍛えられていれば、より向上するのです。

★粘膜疾患の早期発見

6では専門家が口腔ケアを行うことで、例えばお口の中に癌などの粘膜疾患ができてしまっても早く発見できる、といった利点もあります。

いきいきとした生活のために

口腔ケアにも様々な方法があり、誤った方法では十分な効果が得られません。勤医協歯科では全診療所で訪問診療を行っていますので、ぜひご相談ください。


また、介護を受けている人だけではなく、将来介護を受けることを予防し、いきいきとした生活を送るためにも口腔ケアは重要です。「自分はまだ関係ない」と思わずに、まずは定期的に歯科を受診してチェックを受け、正しい歯みがきや義歯の手入れ、舌の清掃を覚えて、実行してみてください。

※誤えん性肺炎 : 口の中の細菌や、食物などを誤って肺へ吸い込むことで起こる肺炎。

 口腔ケアのポイント!

  1. できる限り本人が磨く(リハビリにもなります!) 
  2. 明るいところで行う(よく見えないと歯ぐきを傷つけてしまいます)
  3. 必ず歯ブラシなどの器具を使って磨く(うがいだけでは細菌の数は減りません)
  4. 誤嚥に注意する(座位、あるいは 30 度傾けた体勢で。寝たきりの人は横向きで)


(イラストは兵庫県歯科医師会HPより)


医療法人 北海道勤労者歯科医療協会