勤医協歯科

顎関節症

顎関節症とは?

 顎は左右一対になった関節とそれを動かす筋肉があります。また、関節の上下の骨の間には、顎がスムーズに動くように関節円板というクッションがはさまっています(図)。

顎関節症図

顎関節症は、顎の関節が障害を受けるもの、顎を動かす筋肉が障害を受けるもの、その両方が障害を受けるものとがあります。主な症状としては、顎の関節や顎を動かす筋肉が痛い、顎を動かすとカクッという音が鳴る、口が大きく開かない、口を開ける時まっすぐ開かない、などがあります。ただし、親知らずや唾液腺の炎症などの場合にも、顎関節症と似たような症状が出ることがあるので、他の疾患との鑑別をする必要があります。



顎関節症の症状は…

 顎の痛みは、関節の痛みと筋肉の痛みがあることを述べましたが、関節の痛みは、捻挫のように関節に強い力が加わった場合、関節のクッション(関節円板)がずれてしまった場合、関節の骨が変形してしまった場合などがあります。筋肉の痛みは、激しい運動をした後に体が筋肉痛になるのと同じで、顎を動かす筋肉に大きな負担がかかることで痛みが出ます。程度が軽い場合は、痛みではなく「顎がだるい」という症状のこともあります。関節の痛み、筋肉の痛みともに自発痛であることはほとんどなく、口を大きく開けたり、咬みしめるなど、顎を動かした時に痛みが出るのが特徴です。ですから、自発痛がある場合は他の疾患を疑う必要があります。


 顎を動かすとカクッという音が鳴る場合は、関節円板がズレたり変形していたりする場合がほとんどです。ズレや変形の程度によって、音の鳴る大きさやタイミングが変わってきます。多くは、口を開ける時にズレた関節円板が元の位置に戻ろうとしてカクッという音が出ますが、この時に痛みが出る場合もあります。しかし、一旦関節円板がズレてしまったら、完全に正常な状態に戻ることは難しいと言われています。また、ズレていても日常生活ではそれほど支障ないことも多いので、カクッという音が鳴るだけの症状の場合は治療の対象とはならない場合もあります。


 ズレた関節円板が、口を開ける時に元の位置に戻れず引っかかった状態になると、口が大きく開かない、口をまっすぐ開けられない、という症状が出ます。また、関節や筋肉の痛みが強い場合や、筋肉が凝り固まってしまった場合なども口が十分に開けられないことがあります。おおよその目安として、にぎり寿司を口に入れられなければ、開口障害があるといっていいでしょう。口が開かなくなった場合は、その原因によって治療法が全く異なってくるので、自分で無理に口を大きく開けようとせず、受診するようにしましょう。



原因と治療法は…

 顎関節症の原因は、歴史的に様々考えられてきましたが、まだ十分には解明されてはいません。現在有力と考えられているのは、悪習癖、精神的ストレス、外傷性、咬み合わせの異常の4つの因子が単独あるいは複雑に絡み合って起こるとされています。


 歯ぎしりやくいしばりなどの悪習癖は、関節や筋肉に常に力が加わっているため負担が大きくなります。夜間の歯ぎしりだけでなく、日中でも何かに集中している時や肉体労働をしている時など、くいしばっていないか意識してみましょう。顎の負担を軽減するには、顎もリラックスして日常は上下の歯が当たっていないようにすることが重要です。
 また、精神的ストレスもくいしばりなどを増強させることがあります。生活環境や社会環境からくるストレスはなかなか変えることは難しいですが、日常のストレスとなっている要因をできるだけ取り除いていくようにしましょう。


 無理に口を大きく開ける、硬いものを好んで食べるなど、関節に外傷をきたすようなことは避けるようにしましょう。硬いものといっても、煎餅のようなものだけでなく、スルメのような噛み切りづらいものも顎に負担をかけることになります。
 まずは顎をリラックスするように心がけるということが重要ですが、これら日常の療養で改善しない、あるいは、口が開かない、痛みが長期間続いている、などの症状がある場合は、スプリント(マウスピース)での治療が必要になってくることがあります。また、強くぶつかる歯がある、上下の歯がしっかり咬んでいないなどの咬み合わせの異常がある場合は、咬み合わせの治療も必要な場合があります。また症状によって、薬物療法や理学療法が必要になってくることもあります。関節自体の外科療法が必要となる人は顎関節症患者の約1〜2%とかなり稀ですが、異常があれば一度受診してみましょう。

スプリント装着前後
スプリント本体
勤医協札幌ふしこ歯科診療所 所長 今上岳彦
      

医療法人 北海道勤労者歯科医療協会